人が好き「人生3等分」で現在は社会へお返し生活
連載第29回
●サロンにて。千葉さんは今年9月、スイフト・ウォーター(激流)のレスキュー3・テクニシャン1(ワン)の資格を取得。「終了後に、女性では日本の最高齢者ですね、といわれビックリ!! そのときはじめて、しっかり自分の年齢を自覚しました」とか。 

●外観。帯広市街にあり、いろいろな人の交流の場に、との願いをこめた「まちの駅」の看板が。


●サロンは朝8時から夜10時まで、いろんな集まりに使われるそう。

●サロンに隣接するグループホーム「くつろぎの家」。


●NPO法人の仲間は全国に広がる。モンゴルの植林作業を視察旅行したときのスナップ。モンゴル馬に乗って。


●仲間と一緒に、掘らずに置くだけで植林できるバイオブロック工法の作業中。六角形の段ボールの筒のようなものを使い、育てたい樹木の周辺に柳などを植えて中心の木を支える。じきに淘汰され、柳は枯れる。


●砂地が続くモンゴル。バイオブロック工法で、中心の木が守られながら育っていく。千葉さんは、この工法の初級指導者の資格も取得した。


●植林のために使われる、モンゴルの砂地を肥やす牛ふんの堆肥。「湿度20%なので、からからです。素手でもOK!」。


千葉よう子さん
特定非営利活動法人 帯広NPO28サロン 常務理事


ちば ようこ 1947年十勝管内池田町生まれ、帯広育ち。高校卒業後、父(故・養八郎さん)の建設会社で働くが、77年30歳のとき幼稚園教諭を志し、通 信制の近畿大学付属短大へ通う。管内で幼稚園教諭となるが38歳で管理職に。「もっと子供たちと接したい」「地域に尽くしたい」という気持ちが高まり、99年、NPO法人の28サロンを立ち上げた。2001年には22年勤めた幼稚園を退職し、NPOの活動を一層精力的にこなしている。3人の子どもは独立。55歳。帯広市在住。


帯広NPO28サロン 帯広市西1条南28丁目4 TEL 0155-25-1455



 小さい頃からずっと、行政や電力会社の元請けをしていた父に連れられて護岸工事やダム修繕、建築などの現場に行っていたという千葉よう子さん。「青春の遊び場も現場」といい、たびたび命綱をつけられることも。危険と背中合わせでいることで、自分の危機管理ができるようになったが、男勝りな性格になったと笑う。弟が二人いたが、よう子さんに家業を継いでもらいたいたかった父の願いを辞退し、自ら選んだ幼稚園の教諭の夢を叶えた。「主食は夢」の生き方についてうかがった。

働かざる者は食うべからず

 父親は建設業、母親シゲルさんは文房具屋さんから雑貨屋さん、そして銭湯と店を経営してきた商業者。この家庭で、経済的には何不自由なく育った。父親は千葉さんを現場へ連れていき、遊ばせながら手伝いをさせた。父は危険を伴い、また自然と共存する内容の仕事をしていた。「母も商売に熱心で、そんな両親の姿を見て育ちました。今思えば、二人ともどうしたらお客さんに役に立つか、喜ばれるかということが基本にあったのではないかと思います。両親に教えられたことは多いですね。体感しないことは身につかないということでしょうか」と千葉さん。

子ども像を提唱

 幼稚園教諭の道へ進み、「生きる力をもった、たくましい子ども」という子ども像を提唱した。自分の身は自分で守る、できることは自分でする、そう教えられた自らの幼少時代がそこに重なる。「子どもはいろいろな人と接しながら自分を知る。大人も含め、自分を知るために、地域がもっと安心・安全・元気になったらいいんじゃないか」と考え、「福祉・文化・環境」をキーワードに町づくりを実践するNPO法人「28サロン」を立ち上げた。
 
人に興味がある

 18歳のときに、思い描いた夢。駅前に大きな円筒のビルを建てて、車イスでもまわれる通 路にし、通路からは街の景色がぐるりと楽しめる。買い物も娯楽もすべてその建物内で済ませられるような便利なビル。まさにユニバーサルデザインだ。当時から「町づくり・人」に興味を持っていた。NPO28サロンでは「自分が持っている、わずかな知恵とわずかな時間とわずかな貯えを使って、少しでも役に立てれば」と活動している。「中には、これができると思って実際立ち向かってみたらできなくて、これは無理かなと思ったものが意外にできることがあった。そんな意外性もおもしろい」。頭で考えるより、実践してみること。そこから得る体験・失敗等の評価が経験として生き、次への活動につながっている。
 
サロンは元銭湯

 1999年4月に開設したサロンの場所はもともと、千葉さんの母親が経営していた銭湯。70歳を超えた母親と一緒に、私財を投げうって改築した場所だ。父親が軽い痴呆を患ったのを機に、痴呆のお年寄りのためのグループホーム研究会を立ち上げ、2000年1月には、サロン隣にグループホーム「くつろぎの家」を建てた。サロンは会員30名だけでなく、河川ボランティア、レンジャー、ヘルパー、環境紙芝居や人形劇等々の練習場等、さまざまな団体が共同で使えるようにし、それぞれ年会費(月100円〜1000円)を納めてもらっている。「まちの駅として、十勝の交流の場としての役割を担いながら、今後は、いろいろなイベント活動を日常的に行います」と楽しそうに話す。

夢を追い続けて

 ここでは地球環境保全を含めた大人・子どもの自然体験活動、リバーインストラクター・ホームヘルパー等々の資格養成講座などを行っているが、来年も行政や民間からの委託事業を増やし、運営を安定させることが目標となるそうだ。「NPO法人の運営は厳しいところが多いですよね」と投げかけると、「主食は夢、副食は太陽と水と空気。夢ばかり追っていますが、実は心身共に小金(こがね)持ち?です」と少女のように笑った。


 

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