○蘇りを信じての埋葬
話が逸(そ)れてしまったが、ローマはパリ、ロンドンと並んで誰もが訪れる地である。バチカンのサンピエトロ寺院やシスチーナ礼拝堂、コロッセオ、トレヴィの泉、真実の門、フォロ・ロマーノ、パンテオン、カラカラ浴場、ローマの休日で名高いスペイン広場の階段などは、必ず見にいく場所であろう。
ローマも大都市なので、その他にも見て愉しいところは数多くある。私が面
白かったのは地中の墓所カタコンベである。
カタコンベはラテン語で「墓の側の」を意味する語であり、ローマ皇帝のキリスト教迫害のため、地下の墓を用いて、集会や儀式が行われた。
地下の墓所は時代とともに延長され、さらに数層にもなり複雑に入り組んでいる。アッピア街道に沿って、サン・カリストのカタコンベとサン・セバスティアーノのカタコンベがある。
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キリスト教徒は死後の蘇(よみがえ)りを信じるため、死後は焼かずに埋葬される。地下に通路が縦横に走り、一部の天井や壁には死後も快適な生活ができるように、美しい模様や人々の生活が描かれている。
通路に沿って一人分の棺が入るように、壁がくり抜かれ、周りには食糧となる肉や魚、穀物や果
物、そして皿、ワイン壺、鍋、フォーク、ナイフや竈(かまど)が彫刻されている。犬や猫などのペットが彫られている墓もある。料理人や召使いとともに愛する家族が浮彫りになっているところもあり、国や時代が違っていても、人間の考えることは同じだなと思えた。 |