北海道大学の前身である札幌農学校は、明治9年(1876)に開講した。以来130年近い歴史の中で、12の学部を擁する総合大学に発展した。
創設期にウィリアム・クラークを教頭に迎え、全人教育と開拓者精神を教育理念とした学問の伝統を築き上げている。
大学に収集された学術標本や資料は400万点を越しているが、それらを広く活用するため、4年前に北海道大学総合博物館が設置された。
博物館は理学部の一階に開設されており、併せて3階の一画が資料陳列室として公開されている。
■ウィリアム・クラーク
北大を語る時はどうしても札幌農学校時代のクラークに触れなければならない。博物館の最初の部屋では、クラークの人となりとそのエピソードが描かれている。
クラークは1826年マサチュセッツ州に生れ、アマースト大学を卒業後、ドイツのゲッチンゲン大学で鉱物学と化学を学んだ。Ph.D.を得た後に帰国してアマースト大学の化学の教授となった。1867年にはマサチュセッツ農科大学を創設し、その学長となった。
明治5年通商条約改正のため渡米した岩倉具視一行も、マサチュセッツ農科大学を視察しており、北海道開拓使にもこの大学の卒業生が在職していた。
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クラークは明治9年5月20日に米国を出発し、6月末に東京に着いた。東京英語学校より選ばれた入学生と共に船で小樽に入陸し、7月末に札幌に到着した。
入学生は開拓従事者養成のための札幌学校でも試験が行われ、12名が合格した。
札幌農学校
札幌農学校の開講式は明治9年(1876)8月14日に行われた。開拓長官黒田清隆や校長調所広丈の挨拶に続いて、教頭であるクラークが英語で演説した。
1期生は24名であり、修学年限は4年であった。学年は8月より7月で2期に分かれ、授業は主として午前中で、毎日少くとも4時間は復習が課せられていた。
授業は国語、英語、演説法、英語討論、作文のほか幾何、代数、三角法、測量、土木、物理、天文、化学、動植物学、地質、生理、解剖、農学、園芸、心理、経済、兵学、用兵学などがあった。
各学年に練兵や演説法、翻訳が週2時間設けられ、農学、畜産学、農芸化学、園芸学、造園学、果樹栽培、顕微鏡学、獣医学及実習などの農学関連科目のほか、高低測量及製図、実測製図、三角測量、水利工学、地質学といった土木測量に関するものがあった。農学実習は多く週6時間組まれていた。
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