子育てのヒントも学べる絵本の楽しさを伝えたい
連載第32回
●「一度読んだ本を大人になってから読み返すと、違う面 が見えてくることもあります。そんな新鮮な体験をぜひ、味わってもらいたい」と、読書好きな青柳さん。

●帯広の「市民大学講座」での講演会。絵本がとてもよい育児書になることを講演している。


●小学校まで出張し、大きな絵本を使っての「読み聞かせ」。みんな、真剣なまなざしで聞き入っている。

●自宅前の「市民文庫」の看板。無料で本が借りられる「町の図書館」だ。


●「市民文庫」の部屋。所狭しと本が置かれている。昔読んだ覚えのある本をつい手に取ってみたくなる。

●石けんづくり等もからめた小さな「読み聞かせ」は市内のコミセンでも行われているが、毎年1回一大イベントとして「子どもの本フェスティバル」を開催。今年は7月20、21日に予定。絵本作家を招いての講演や読み聞かせが行われる。


青柳 規子さん
「帯広図書館友の会」代表 
「市民文庫マスター」


あおやぎ・のりこ 1938年帯広市生まれ。高校卒業後北海道教育大学旭川校へ。帯広市内の小・中学校で5年間教師を務め、育児のため退職した後も本の魅力を伝えようと、自宅で「市民文庫マスター」を開設。「十勝おやこ劇場」の創設にも尽力するほか、現在は「十勝子どもの本連絡会」の代表、来年度着工予定の新しい図書館建設構想を受けて昨年11月に発足した「帯広図書館友の会」の代表を務めるなど、本の分野で活躍。2000年には社会教育功労者の文部科学大臣表彰受賞。

 


●「市民文庫」帯広市西9条南14丁目 
TEL 0155-24-3721(ご利用の際はお電話を)



 本のおもしろさを子どもに伝えるために、自宅で「市民文庫マスター」を開いて22年以上。また「読み聞かせの会」をあちこちで開くなど、本に関わる活動を積極的にこなしている。長年見てきた子どもと絵本のかかわり、そして親の子育ての悩み。「絵本はすばらしい育児書」という青柳さんに、絵本の魅力をうかがった。

●変わる子どもの「時間」

 22年前、自宅で文庫を始めた当初、子どもたちは文庫の中で交流し、夜暗くなるまで本を読んでいた。「だんだん、塾やらお稽古ごとやら子どもが忙しくなって、本を借りにくるのも減りました。特に昨年から土曜が完全に休みになると、塾に通 う子どもが一気に増えて、ここに来る子どもたちも目に見えて減りましたね」と青柳さん。
 子どもはどんどん本を読まなくなってきたようだ。

●文庫の本の種類


 ここには約5000冊の本が所狭しと置いてある。当初は小説や高学年向けの児童書も多かったが、しだいに絵本や小学生低学年向けのものが増えた。本に関する自分のわずかな講演代や原稿代はすべて文庫の維持費に変わる。子どもが大きくなって読まなくなったから、と寄付される本も多い。
 「自分の子どもが小さいときには、ここで読み聞かせをすることもありました」と育児時代を振り返る。青柳さん自身は小学校の頃、朝や給食の時間に本好きの先生が読み聞かせをしてくれて楽しかった思い出を持つ。
「今あちこちで大型の絵本を使って、読み聞かせをしています」。

●読み聞かせの大切さ

 読み聞かせすると、親子の絆が深まるばかりか、考える能力が身につくといわれ、近年特に注目を浴びるようになった。実際、絵本を読み聞かせていると、子どもは興味の向くままに、前のページに戻って確認したり、素朴な質問を投げ掛けたり、想像を新たに膨らませたりする。
 「高齢者、障害者が登場する絵本もあります。実際に接するときに、過去の想像が記憶に残っていて、応用した対応ができます。また、小さな子は言葉の音を敏感に感じ取って、新しい言葉ほどすぐ覚えて使いますね」とのこと。  

●幼児期に大切な言葉の教育

 おうちにお客さまが来たとき、2歳の女の子が果物を運んできて「さあ、どうぞ」と差し出したそうだ。彼女に読んで聞かせた本の中に、その言葉はあった。またあるとき、幼い男の子が「たんげさぜんの本」を探しに来た。「たんげさぜん」が主役のものではなく、だるまちゃんが出てくるもの、といわれ青柳さんはピンと来た。「だるまちゃんとうさぎちゃん」(加古里子作)の中の一文に「たんげさぜん」が出てくる。新しい言葉ほど子どもの記憶に残っていく。
 三つ子の魂百まで。小さい頃から「言葉の教育」は重要なようである。

●図書館友の会の活動
 一方で青柳さんは新しい図書館づくりに向けて活動する「帯広図書館友の会」の代表も務める。現在会員は70名を超えた。今後は布絵本づくりや読み聞かせの会の開催、ハンディキャップを持った人にもやさしい環境づくりなど、市民ボランティアを中心に進めていく。
  「図書館の機能は多様化しています。利用者に喜ばれるよう活動していきたいですね」。青柳さんは今年ますます忙しくなりそうだ。

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