手作り味噌のおいしさを伝えたい
連載第26回
●農村在住の女性の味噌づくりグループ「味彩 」の活動拠点ともなっている「めむろ味噌工房」。

●この日は体験の日で、28kgの音更産大袖振大豆を14個に分けて、8kgの味噌を作る。材料は大豆、米こうじ(きらら397)、小麦こうじ(ホクシン)、天日塩、水(種水)のみ。かなり大粒な大豆だ。

●機械を使って、やわらかく煮た豆をすりつぶす。

●塩を敷いた樽に味噌を詰める。上からも塩を振り、フタを閉めて1年間寝かせる。昨年から5月まで、初年度の仕込みは「味彩」の「元気みそ」と合わせて約2t弱。必ず食べたい!という方は予約を。

●内山正男さんと奥さんのミネ子さん。10歳のときからの幼なじみで、互いに味噌づくりが大好き。

●「これさえあれば、ご飯が進む」。黒豆の味噌で作ったナンバン味噌と、大根・ナンバンの三升漬。いずれは350円、200円で販売する予定。
内山 正男さん

うちやま・まさお 1935年(昭和10年)東京生まれ。戦災で家を失い、45年の終戦1カ月前に、北海道河西郡芽室町に家族とともに10歳で入植。その後、両親の後を継ぎ農業を営み、幼なじみの奥様ミネ子さんと結婚。2000年(平成12年)に農業を退職、長年続けてきた味噌づくりを本格的に始めたいと思い、翌年牛舎を改装して「めむろ味噌工房」を開設。ミネ子さんも参加する女性の味噌づくりグループ「味彩 (あじさい)」と同場所で味噌づくりを行う。

●めむろ味噌工房
 芽室町上伏古10線17
 TEL 0155-62-1020



 味噌づくりを始めて20年。自分独自の味が確立しつつある。以前から味噌づくりの工房を建てたいと思い描き、農業の引退をきっかけに開設した。「入植した頃、親は味噌から豆腐まで、手作りしていた」と内山さん。小さい頃の経験から生まれる、昔ながらの安全、安心な懐かしい味。そのおいしさを広く知ってほしいという内山さんに、手作り味噌の魅力をうかがった。

朝一杯の味噌汁

 内山家の食卓に欠かすことのできない「朝一杯の味噌汁」。「昔から手作り味噌の汁を食べていました。これがないと朝が始まらない感じです」と笑う。保存料など一切使わず、昔のままの分量 の天日塩を使うことで貯蔵性を保っている。大豆は音更大袖振大豆。「その中でも黒目といわれる最高級の豆を使います」。市販の味噌では味わえない、深いコクが楽しめるという。

6年前からの挑戦
 
 味噌を作る工房を思い立ったのが6年程前。当時の芽室町の農業普及員さんの協力もあって、雑多な手続きを学びながら、手探りで作業は進んだ。「途中、いろいろありましたが何とかここまでたどりつきました。農家女性のグループ味彩 (あじさい)も加わり、それぞれの販売ルートを持って活動しています」。

品名「的印」の完成

 内山さんの作る味噌の名は「的印(まとじるし)」。いまや指導員も務める、30年ものキャリアを持つアーチェリーにちなんで命名された。「的があると、がぜんやる気が起きるんです」。熟成期間は丸1年。仕込みは秋から5月までの間で、5月いっぱいは味噌づくりの体験も受け付けている(毎週水曜日、電話でお問い合わせを)。昨年秋から仕込んでいる味噌は、順繰に今年の10月頃より販売を始める。芽室近郊は宅配もするそうだ。1kg700円、お好みで何kgでも詰めてくれる。
 
こうじは生きている

 「的印」には北海道米「きらら397」の米こうじと、道産小麦ホクシンの小麦こうじを混ぜて使っている。
 「こうじは生きていますから、ご自宅でもまだ熟成させられます。例えば車庫など20℃程度に保てるところで熟成させれば、よりまろやかな味わいが出てきます」とミネ子さん。多少白カビが生えても、表面 だけなのでそのまま混ぜても平気だとか。「昔はカビブタと呼んだほどで、熟成を進めるフタ変わりでしたけどね。気になる方は、表面 だけすくって取り除いてくださいね。でもその分で一夜漬けなども作れるんですよ」。昔からの生活の知恵は、ものを大切にする気持ちも学ばせてくれる。この手作り味噌は、ただ今予約受付中。安全安心な内山さんのふるさとの味をかみしめてみませんか。


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