個性的な温泉街づくりに力を注ぎたい
連載第26回
●糠平温泉旅館組合事務局長の中川博元さん。



●木の温もりが素朴な「湯めぐり手形」1200円。1枚で、糠平温泉旅館組合加盟の情緒あふれるお風呂を3軒利用できる。
入浴時間は9:00〜21:00。












●大雪グランドホテル外観。




●ふきのとう発泡酒。1瓶330ミリリットル入りで630円。現在仕込み中で、4月末からまた登場予定。たいていは各旅館の夕食時に消費されるが、口コミで買いに来るお客さんもいるとか。





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中川 博元さん
糠平温泉旅館組合 事務局長

なかがわ・ひろゆき 1969年(昭和44年)上士幌町糠平生まれ。上士幌高校卒業後、株式会社コクド入社。ホテル勤務などを経て、99年(平成11年)糠平へ戻り、父親が経営する大雪グランドホテルに勤務する。翌年父親が他界し、支配人に。2000年、糠平温泉旅館組合副組合長就任。2001年には同組合の事務局長となり現在に至る。他の旅館の支配人とともに、個性的な温泉街づくりに関わる。家族は母親と妻。
●大雪グランドホテル 上士幌町糠平
 TEL 01564-4-2111
ぬかびら温泉旅館組合ホームページ

 十勝・帯広から北へ約1時間。上士幌町糠平は、雄大な自然を擁する大雪山国立公園の東部に位置し、質の良いパウダースノーのスキー場と、豊かな温泉が湧くことで知られる温泉街だ。2002年秋、ある宴会の席で「ふきのとうのビールを造ってみてはどうだろう」と持ちかけられ、糠平の特産にすることに話がまとまった。同席した者の中には「まさか、本当に造るとは…」との驚きの声も上がっていたという。夢の発想を実現する、地域が一体となった糠平温泉地区の取り組みを、糠平温泉旅館組合事務局長の中川博元さんにうかがった。


ふきのとうの発泡酒

 早くから発泡酒造りを手掛けている「帯広ビール株式会社」に製造を委託。早速、ふきのとうを原料とした発泡酒造りが始まった。
 出来上がったのは、ほろ苦い、ふきのとうの香りいっぱいの発泡酒。試験的に300本生産された。1瓶330ミリリットルで630円。決して安くはないが、地元の特産品として旅館に振り分けて卸したところ、「変わった味」「珍しい」など観光客の評判を呼び、あっという間に完売した。ふきのとうの苦さは春の味を代表するものだ。そして、どこか懐かしさも漂う。沖縄の食材「ゴーヤー」も相当苦いが、その苦さが健康にいいと話題になった。苦さは身体の中の不浄なものを浄化させる作用もあるのではと注目されているほどだ。「次の発泡酒は3月20日から仕込みが始まっています。4月末にはまた登場します」とのこと。地元のみの販売となり、糠平ならではの味わいが堪能できる。

湯めぐり手形
 
 糠平温泉では、昨年からちょっと変わった「湯めぐり手形」も実施している。「以前、テレビ番組の収録で黒川温泉に行ったのがきっかけ。そこのシステムを参考にしました」と中川事務局長。中川さんを含む出掛けた4人は、黒川温泉が大変勉強になると推奨、最終的には糠平温泉旅館組合のメンバーが皆訪れているそうだ。
 湯めぐり手形は木の輪切りの形で1枚1200円。宿泊している場所にかかわらず、組合に加盟した糠平温泉旅館の温泉を3つまで、お好きに楽しめる。入浴料は各旅館とも500円のため、3つ入れば300円お得。しかも、かわいい手形は旅の記念品にもなると旅行者に好評だ。「露天風呂のない旅館もありますし、それぞれ趣向をこらした浴場を持っていますので、いろいろ楽しんでいただきたいですね」。

画期的な味めぐり

 湯めぐりに続き、実施したのが「味めぐり」。これも、宿泊場所にかかわらず、各旅館の名物料理が楽しめる(一夕食のみ)。各旅館がしのぎを削って競争している地域が多い中で、各旅館共同参画のこの企画には新鮮な驚きも感じる。「何度も話し合ってまとめないとできない企画でしたね。でも皆、糠平温泉街を盛り立てようとの思いがありますから」。ユニークな企画は動き出し、スキー合宿など、連泊のお客さんなどに喜ばれている。
 
森の中の温泉街を目指して

 今、一番力を入れているのが一昨年から始めた「植樹」だ。「以前やっていたイベント等は一時的なものなので、もうしたくない。もっと長く続く形で何か始めたい」と考えた結果、植樹の話は生まれた。街並の景観を守るために、大雪山国立公園の植生を変えない木々を専門家に選定してもらい、毎年植樹している。植えているのは赤エゾ、ナナカマド、モミジなど。将来、多くの木が繁り森の中に温泉宿が息づく日を夢見る。秋には色づき、美しい紅葉も期待できそうだ。
 中川事務局長は今後も「森の中の静かな温泉街」を目指して、他の先輩経営者や地元の有志とともに街づくりを盛り立てていく。


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